後藤 愼平の手掛ける"MASU(エム エー エス ユー)"FW24 3rdデリバリーが発売開始。パリで初となるランウェイを開催し、一層世界から注目を集めるきっかけとなったコレクション"falling rain said yes to the boy"。
メルトンを使用しルックでも一際目立ったロングコートが登場。ダブル合わせの仕様だが、ボタンを掛けず内側のコットンのテープを結んでの着用も可能。素材やシルエットなど一見クラシックなコートに見受けられるが、後ろ襟やラペルの切り込み、右身頃の見返しから生える2枚目のラペルのカッティングなど、随所に今シーズンらしいエッセンスが注入されている。ラペルは襟のボタンで留めると口元の近くまでを覆うマスクのような高さに設定されている。"ミイラ(Mummy)"をイメージしたダウンや、スタッズを落とし込んだコートやコウモリのような大きなフードが特徴のブルゾン、パリのスーベニアショップで見つけたグラフィックをオマージュしたロゴを採用し天使の羽のような穏やかな風合いに仕上げたニットが到着。
MASU BOYSラインからは、待望のライストーンを施したデニムシリーズがリリース。ペンキの跳ね返りのように乱雑に散りばめられたラインストーンは、汚れや傷も見方によっては星屑のように輝いて見えるという思いが込められた。ヴィンテージの要素を踏襲しながらも、ブランドのオリジナリティを感じるジャケット、バギー、フレアデニムパンツをご用意。
発売日時
- ONLINE STORE
- 9月29日(日) 10:00〜
- 原宿
- 9月29日(日) 11:00〜
FALL WINTER 2024 COLLECTION
falling rain said yes to the boy
たとえば、後藤氏は、こうもりの羽ばたきに天使の姿をみることがあるし、食べ残されたケーキに宿るユニークな美を見出します。 彼のステイトメントは、「口には出さない本音」をコレクションに浸透させることで果たされます。 「雨上がりの日の蜘蛛の巣に水滴がついて、光を受けてキラキラしていることを「可愛い』や「綺麗」だと感じて胸を打たれたとしても、多くの人はそれを隣に歩く恋人には話さないでしょう」と後藤は喩えて、皆が孤独に秘めているであろう特別ではない感覚に関心が向かっていると語ります。 「もしかしたら子どもはその本音を口に出すでしょう。僕も言ってしまうけどね」と笑って続けました。
これまでよりも内間的な空気感を抱いた2024年秋冬は、共感がもたらす開放的で軽妙なストーリーで構成されています。 明快な外見と繊細さを秘めたコレクションには、鋭さと丸みが共存するこうもりのシェイプやカッティングを発見することができるでしょう。クラシックなチェスターフィールドコートの襟や首元から、撥水素材のロングレインコートやチャップスのヘムライン、スーツ地でクラッシュヘムが特徴のつけ襟型フードとダブルフェイス・スポーツジャケットのフード、あるいは、レザーベストの輪郭まで。傷や痛みもメタファーのひとつでしょう。キバのように切り抜かれたキャップのホールはラインストーンで装飾され、包帯をイメージされたサテン地のダウンジャケット、ジャケットに空いた傷口をふさぐ瘡蓋のようにスタッズがあり、ダメージを受けたトーシュースにはラインストーンが添えられています。
さらに「孤独」と「美しさ」が反目しないことを伝えるシグナルは、静かで例的なシーンを想起させます。例えば、雨の下や雨にうたれた染みは、ダブルフェイスのコートの肩のスタッズ、レザージャケットにレーザーカットで開けた無数の穴とリンクし、スウェット地のロングスカートには地面の雨が染み込んで見えるかもしれません。蜘蛛の巣が肩にかかったような様はエレガントなチェーンで表現され、朝日に光る蜘蛛の巣のグラフィックはフロッキーやインクジェットでプリントされています。逆さに飛ぶ風船のグラフィックはVERDYによって描かれ、スタジャンやトラッドなツイード地のジャケットにアタッチされた同じ布地のいくつものワッペンは「見えにくくとも確かで静かな主張」の記号として機能しています。 シンボル的なレザーのケーキバッグは未来の幸福を閉じ込めた宝箱でもあります。そして、ダークなカラートーンの中で活きる大胆な“kirakira”は、MASUのアイデンティティをあるがままに表しています。
ランウェイには、後藤氏が思い描く“ダークヒーロー”がそぞろ歩きます。彼らは、脱力でも知力でもなく、思いやりと優しい眼差しこそを武器としているのです。 コレクションは、日本的感覚によるヴィンテージへの多的なアプローチに富んでいるが、「暗さ、汚さ、悲しさのイメージが偏見的にもたらされる様々なものを見つめ直し、日常に浸透しすぎて忘れられたものを思い出させる」という、人々との新しい共感をもたらすエッセンシャルな「肯定」への挑戦でもあります。雨だけど可愛い。寂しいけれど美しい。矛盾しそうなものを、逆説的に肯定しているのです。